はてな題詠「短歌の目」

毎月1回、はてなブログで気軽に短歌を詠むイベントです。

短歌の目第十回12月の総評です・後編

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第十回12月、ラストの回は30名のご参加となりました。
皆様ありがとうございました。
ラストですので、今回の皆様のご投稿作品から運営が個人的に「いい!」と思ったものを上限3つまででピックアップ、感想を述べさせていただきます。
なお今回のピックアップ基準は、基本定型を守った上で、
「三十一文字で物語を感じられること」
「詠み手さん比で上達が感じられること」
「詠み手さんの世界観が感じられること」

です。
今回は後編として、エントリ−16〜30名の方へのご感想です。
前編はこちら
tankanome.hateblo.jp


皆さまの作品一覧はこちら
tankanome.hateblo.jp



16.
yureru-skirt.hatenablog.jp

2.密
お互いの秘密をぜんぶ 持ち寄ろう
二回に1度虚構を混ぜよ

5.くま
目の下のくまさえ魅力になる人だ
失恋したら標本にする

8.鐘
誰がために鐘は鳴るなり法隆寺
隣の客は牡蠣養殖者

id:yureru-skirtさん
ゆれスカさんは第5回からのご参加でしたね。ことば選びに独特のセンスがあり、初回参加時からどきりとさせる歌がありました(「花火師は死に近い職業だよね 死について云う君は遠くに」とか)。 学生さんかとお見受けしますが、これからも折りに触れ詠んでいただければ嬉しいです。

5、下句の毒っ気が持ち味ですね。
8、ことば遊びの力の抜け加減が好きです。

17.
sociologicls.hatenablog.jp

1.ファー
傷口にフェイクファーを巻きつけて街へ踏み出せ ビールを買いに


5.くま
あくまでも「貴方の為」と言うけれど 正しい事は今正しくない

6.石
曖昧に家を飛び出す直前に掴んだ石の意味は「決断」

id:sociologiclsさん
稲沢さんはフジファブリックなどいわゆるロキノン系(で、いいんでしょうか、私疎くて)とフィーチャーした歌がお上手だな、と思っていました。短歌づくりに一時期迷っているところもお見かけして実は心配だったのですが、きっとそれだけ真摯に向き合ってくださっていたのでしょう。
願わくば、今後も負担にならない程度に短歌を胸ポケットに入れいただければありがたいです。

1,傷口、フェイクファー、ビールという単語の使い方と情景がカッコ良くて好きです。傷ついても虚勢を張る強さを感じます。


18.
soulkitchen.hatenablog.com

6. 石

 何者になれない僕らのような石 拾って滝のそばに積んでく

8. 鐘

 鐘の音の空から落ちてくる夜のおおきいみそかは別れのにおい

10.【枕詞】降る雪の

 降る雪の消えたらはるよ春よ来いこたつの君がちんとんしゃんで

id:letofoさん
紙さんは後半からのご参加ですね。慣れてきてさあこれから!と言う時に第一期終了で申し訳ないかぎりです・・・。ブログ中の写真も素敵でした。ぜひ第二期再会の時には、写真と短歌のコラボなどもご投稿くださいませ。
8、「ことばから事象をつくる、意味をつくる」が自然にできている歌だと感じました。そしてきっと紙さんの感じ方、ことばなんだろうと思います。
この歌が好きです。

19.
hayashinaoko.hatenablog.com

2. 蜜

切り分けて蜜を見つける嬉しさよ 真冬を連れて林檎到来

6. 石

どんぐりのかわりに小石集めてる かじかむ指で真冬の子たち

8. 鐘

その鐘は妙なる楽のようであり 祈りにも似て私を鳴らす

id:naocoさん
林さんは第3回からのご参加でしたね。歌も歌われるということで、作詞作曲に通じるものがあるのでしょうか、初登場のときからしっかりとした言語センスと世界観をお持ちでした。
恩師のご逝去の歌もありながら物語のような歌もあり、現実と幻想を行ったり来たりするような感じが読み手にとってはちょうどよい距離感なのでした。
6,どんな情景を詠んでも子どもへの目線の優しさは変わらないなあと感じました。

20.
matoyomi.hatenablog.com

4. グレーゾーン
 年の瀬にやむなく欲するグレーゾーン こたつの中で猫は生き死に


9. 氷
 外氷水道管も破裂して桶も私も家も世界も

id:kyokucho1989さん
局長さんはコンスタントにお題の提供をありがとうございました。
「どうやって詠めっちゅーねん」というお題もあり、それがかえってこの企画の緩衝材にもなっていました。
そして提供のお題同様「なにを思ってこの単語をここに持ってきたんだろう」と度肝を抜く、振り幅の広い短歌も多く生み出してくださいました。機会があればぜひ一度短歌の作成過程についてお話させていただきたいです、いかがでしょう。

4、シュレディンガーのこたつの猫ですね。
9、真冬の水道管から始まる世界の飽和。

21.
kn.hatenablog.jp

1. ファー

あの子なら明日の二時にフェイクファー巻いて秘密を増やしに行くよ

5. くま

訃報聞き書棚を探す浅きにもちくま文庫の背表紙は優し

10.【枕詞】降る雪の

降る雪の消えつつもなお放ちゆく熱さを知るはphysicistのみ

id:isachibi59さん
こなやぎさんは後半からのご参加でしたが、ご経験者ということもあり、卓越した語彙力、幅広い見識と遊び心あふれる歌で楽しませていただきました。在住されているという中国と日本との差異を詠んだ歌もユニークでした。
運営の私も、こなやぎさんのように肩の力を抜いて短歌を楽しむ、という詠み方をしたいものです。

5,お好きな作家さんが亡くなった、そんな情景でしょうか。「ちくま文庫の背表紙は優し」が好きです。


22.
ohirune.hateblo.jp

6. 石
いててててやっぱ痛いよ大福でやってもダメね石打ち刑は


7. イエス
イエス様なんか言ってよ『・・・・・』なんか聞こえたでもヘブライ語

id:aoxさん
あへあへっどさんは短歌も参加形式もフリースタイルな感じがまた良かったですね。ラストにもお付き合いいただきありがとうございます。サンキューあへあへっどさん。
9月のご参加で「口語調ばっかり」と振り返っていらっしゃいましたが、いずれの歌も口語のリズム感がかなり良かったです。
6,なんで石打ち刑を大福でやっとんねん、と声出して笑いました。

23.
kimaya.hatenablog.com

6. 石 夕暮れのサイレン聞いた帰り道 蹴飛ばす石を一つ選んで


7. イエス 誓うかと問われて吐いた「イエス」でも軽いわけではないと思うよ


10.【枕詞】降る雪の 降る雪の消えた路地裏照らされるコーヒー香るざわめきの夜

id:kimayaさん
きまやさんは初回からのご参加でしたね。ご自身がなにを伝えたいのか、どの語彙・フレーズを用いてご自分の気持ちを伝えればいいのかをすでに掴んでいらした印象です。猫さんを詠まれた歌からは愛情も伝わってきました。
きまやさんのテーマがより深くなるのか、それともまた新たなテーマになっているのか、楽しみな詠み手さんのひとりです。第二期再会時に機会があえばぜひまたそこでお逢いしましょう。

6、蹴飛ばす石を一つ「選んだ」ところが良かったです。受動な生活の中で必死に能動的に選択できるものを探している、というのは読み込みすぎでしょうか。

24.
shohei.hatenadiary.jp

2. 密(蜜→密に訂正しました!)

先代が書いて残した六波羅密(蜜→密に訂正しました!)

6. 石

さて次は石器時代にご案内あれがあなたのお母さんです


7. イエス

もう一度答えてください質問にイエスと言うまで何度も聞くよ

id:shoheiHさん
8月からのご参加ですね。初回から言葉選びのセンスがよい方だな、という印象でした。肩の力を抜きつつ、背伸びをせず、31文字で物語をつくる、ということを楽しんでいらっしゃいましたね。
願わくばこれからも何らかの形で短歌を続けてみてください。

6、タイムトラベルかなんかで時代をとび超えた先になぜか自分のお母さんがいる、それを当たり前のように紹介されている、というねじれ感が気持ち悪面白いなと思いました。

25.
hirinzu.hatenablog.com

2. 密

休日は密かに眠るケータイも鳴らず誰にも忘れられて

5. くま

とりあえず飾ったくまのぬいぐるみ喜べなかった私を責める 

10. 降る雪の

降る雪の白が視界を埋め尽くし窓辺で静かに昂っている

id:hirinzuさん
緋綸子 さんは第2回からのご参加ですね。
ちょうどひとり暮らしを初められた頃と重なったいたんでしょうか、ご自身のふりかえりでも書かれていますが、第一回目10首目の歌がものすごくリアルだと感じたことを覚えています。
「これはたしかに私が作ったんだなぁと思えるもの」を詠んでいくことが短歌を楽しむ大条件だと私も思います。

10、最後の最後にしてひりんずさんの歌の特徴を表している歌だな、と感じました。派手な単語選びや感情の起伏はないけれど、静のなかの動、こまかな機微にどきりとさせられます。

26.
mikatsuki.hateblo.jp

1.ファー

 本物じゃないは承知のフェイクファー嘘で包んで温めていて

8.鐘

 京の街鐘を鳴らしに友と行く君を案じたあの大晦日

10.【枕詞】降る雪の

 透明なドームの中に降る雪の積もることなく描けし軌道

id:sakura_i さん
桜井朔咲さんは第五回7月からのご参加ですね。
その前からご自身で短歌を詠まれていらしたんですね、納得のリズムの良さです。日常を日記的に上手に三一文字に落とし込んで詠まれています。
きっと桜井さんは短歌の目がなくてもコンスタントに詠み続けられる方ですね。そのお力が、第二期再開時、どこまで変化されているか、またご自身の軸がくっきりとなっているかが楽しみです。

8、桜井さんの歌には時おり友達とのかかわりや友達への優しいまなざしが登場します。この「君」が前述の友と同様のお友達なのか、それともそれよりは少し特別な存在なのかははっきりと書かれていませんが、はっきりさせないところに桜井さんの世界観が出ているのかなあと感じました。

27.
hakoniwa-no09.hatenablog.com

8. 鐘
柿食へば十四世紀も前の世のどこかからまだ鐘が鳴るなり

9. 氷
流氷の町は待つあの灯台でオホーツクから流れ着く冬


10.【枕詞】降る雪の
降る雪の白髪までに地に沈み採れるキャベツの強きことかな

id:Qingum さん
きゅーいんがむさんは初回からのご参加ですね。
それまで気になってはいたという短歌ですが詠まれるのは初めてだったということで、でも正直初回から「自分の目がある方だな」と思っていました。
きゅーいんがむさんが参加作品後に感じたことを書いてくださっていたのですが、まさに運営が最初に短歌に触れたときの感覚と同じでした。これからもご自身がみつけた魔眼と遊び心を大切に、短歌で遊び続けてくださると嬉しいです。

8、の遊び心が好きです。そしてまた、この歌の表すものこそが短歌俳句などの喜び楽しみではないかなと思います。歌を通して、時代を超えて先達の詠み人に思いを馳せ、感情を共有し、郵便的コミュニケーションをとることができる。

28.
tuchinoco.hatenablog.com

2. 密

クリスマス・カクタスは吐くその昔密封された世界の息を

3. LED

永遠に不滅です、との宣言をあまねく照らすLED灯

6. 石

死ぬであろう日付が書かれたクオバディス 石と呼ばれた男が抱きぬ

id:imada-natsuki さん
いまだなつきさんは初回からのご参加ですね。
この他題詠マラソンやYUTORICK、毎日歌壇等にもご投稿されていたりと創作意欲わきあがること泉のごとし、頭が下がる思いです。AからΩへ、といったようなスケール自由自在の比喩表現が卓越していました。いまださんは別記事で佐藤信夫氏「レトリック感覚」*1をご紹介されていたので、彼のことばが血肉になっていらっしゃるのでしょう。今後の活躍が楽しみな方です。
2、「マス」「タス」「吐く」の韻の踏み方が心地いい。
6,クオ・バディスがわからなかったんですが、この単語の意味を知った途端、映画のワンシーンのように映像が頭に浮かんでくるのが不思議でした。

29.
miinm.hatenablog.com

4. グレーゾーン
どちらにも転べるようにと守ってたグレーゾーンに色をつけよう

6. 石
欲しかった石ころぼうしも今はもうさみしさに負けそうだから絶対いらない

8. 鐘
放課後に鐘楼広場に集まって勝手に撞いて怒られたかった

id:mii_nm さん
ご参加はこれで2回め、かな?
でもきばりすぎず、マイペースに参加してくださっているのが嬉しかったです。参加まもなくでもう第1期お休みなのは申し訳ない限りですが、ぜひ再開したらまたゆるゆるとご参加くださいね。

8、鐘楼広場ってことばを初めて知りまして、たしかにそれは勝手に撞いてみたいかも…!と想像しました。
勝手に撞いたら寄宿舎の女教師がキーッって怒りにくるんですよね。で、友達と笑いながら逃げるんですよね。

30.
masarin-m.hatenablog.com

2,密

カラオケで 耳にささやく 密かごと やめておくれよ 君はヤツの娘

5,くま

初日の出 くまなく照らす 初霜を 初ふみもちて はやる心と

10,降る雪の

降る雪の 雑音すべて かき消して さよならの言葉 のみ人生だ

id:masarin-m さん
まさりんさんは第八回からのご参加ですね。最後まで正式名称が決まりきらず大変失礼をしました…。「やりながら決めていけばいっかー」と言って、わりと何も決まらないことが多い私です。
まさりんさんはid:zeromoon0さん主催「短編小説の集い」に参加されており、精緻な人物・情景描写でも知られる書き手さんです。
短歌は初心者枠でのご参加ということでしたが、やはり創作意欲の旺盛な方は初めてだろうが熟練だろうがいろんな形式での創作に躊躇がないんだなあすごい、というのが率直な感想です。
短歌は定型の形式に慣れるというのも必要なので、もっとまさりんさんの今後の変化を見ていたかったのですが、突然の第一期終了ですみません。

2,なんとなく90年代を彷彿とさせますが、本当にこんなドラマティックなことが身の上に起こっていらっしゃいそうです。で、実話なんですかこれ。ドキドキ。



以上、上記参加者さん以外にも、たくさんコメントしたい方がいらしたのですが、別の機会にいたします。
また、拙い運営にもご協力をいただき、ありがとうございました。至らない部分も多々あったと思いますが、次回に活かします。

これからも皆さんが、嬉しいとき楽しいとき哀しいとき死にたいとき、心の片隅に「そうだ、短歌があるじゃないか」と思い出してくださると嬉しいです。



ではまたいつかの、第二期「短歌の目」でお逢いしましょう。

よいお年を。

*1:「類似性にもとづいて直喩が成立するのではなく、逆に、<直喩によって類似性が成立する>のだと、いいかえてみたい」という部分が、永田和宏著「 NHK短歌 新版 作歌のヒント 」内で紹介されていました

短歌の目第十回12月の総評です・前編

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photo by lanuiop

第十回12月、ラストの回は30名のご参加となりました。
皆様ありがとうございました。
ラストにあたり、今回の皆様のご投稿作品から運営が個人的に「いい!」と思ったものを上限3つまでに絞りピックアップ、感想を述べさせていただきます。
なお今回のピックアップ基準は、基本定型を守った上で、
「三十一文字で物語を感じられること」
「詠み手さん比で上達が感じられること」
「詠み手さんの世界観が感じられること」

です。
今回は前編として、エントリ−1〜15名の方への感想です。

1.
nogreenplace.hateblo.jp

6. 石
 「この先に私を殺めた石があるので砕いて私と埋めてください」

7. イエス
 物事に完璧などはないですと復活仕立てのイエスがはにかむ

10.【枕詞】降る雪の
 降る雪の真白き鋼ぞ眺めても流れる言葉は積もりも積もらぬ

id:zeromoon0さん
 基本定型、リズム、情景描写を高いレベルでしっかりおさえつつ、回をおうごとに会話短歌や「詩歌」としての短歌、「感覚」の表出へ挑戦する姿勢が感じられました。「ばっかじゃねーのイッツクレイジー」の下句の語呂の良さとかいまだに完璧だなと思いますね。
 ブログ活動自体ご自分にかなりの制限を課されている方なので(個人情報ほとんど出さないとか)、時に感情や私性の表出も必要になる短歌はやりにくいかもしらんと思っていましたが、どの歌もそれぞれ31文字のなかで物語のワンシーンをしっかり「創作」できていらしたのはさすがでした。

6、(悪)夢っぽい時空のねじれ感がむぅさんっぽくていいなあと。
7、復活したあとのイエスは神様なはずなんですけど、はにかむイエス、かわいい。


2.
anohika.hatenablog.com

2. 密

密やかに愛を育み密やかにさよなら告げた 誰も知らない

9. 氷

あなたとの別れ話が長引いて氷はぜんぶ溶けてしまった

id:anohikaさん
 10月からのご参加ですね。31文字で物語のワンシーンを見せる、というのが最初からお上手だなーと思っていました。もう少し成長していくところを見ていきたいというなかでの第一期終了で申し訳ないです。また次回開催のときは是非、ご参加くださいね。

2、秘め恋というやつですね。寂しさが出ています。
9、氷というディテールに目線を向けているところが短歌のツボをわかってらっしゃいます。


3.
hyacinthus.hateblo.jp

1.ファー 

あたらしい国をめざして行く鳥よ「 遠くへ遠くへ( ファーファ )」って鳴きながら飛ぶ

4.グレーゾーン 

見渡せばグレーゾーンの海だった泳ぎつけるだろうかどこかに

9.氷 

ひとりずつ溶けない謎を持ち合って永久凍土はあるってわかる

id:hyacinthusさん
ご経験者とのことで、ご自分の世界をしっかり持っていらっしゃって、運営としては頼もしいかぎりでした。
題詠について「楽ではないけど楽しかった」とのこと、他の方の詠み方など新しい短歌の楽しみ方を今企画で見つけていただけたなら、運営冥利につきます。

1、「ファー」というお題を「far」と鳥の鳴き声、複数のことばにかけて歌にしたのが上手。
9、誰もが他人を100%は理解し得ない。けれど誰もがその寂寥感を感じている、そう思えば、少し楽になれます。「あるってわかる」ことが救いです。


4.
ryo71724.hatenablog.com

6. 石
ママ見てよギュッと握った彼の手の中にあるのは光の原石

10.【枕詞】降る雪の
降る雪の消ぬ間にここへ来れるのか待つ身もどかし飛んでゆけたら

id:ryo71724さん
りょうさん、皆勤賞ですね!今企画に参加まで、短歌にはあまり馴染みがないとおっしゃっていた記憶があります。
実は個人的にいちばん成長スピードが速い、と感じていたのがりょうさんです。

6、第0回目から一貫してお子さんを詠んだ歌がありましたね。
ラストでこのような歌が生まれるとは。
ママと呼びかける子、ギュッと握った手、その中の光、という風にズームインの目線と希望を感じる読後感が素晴らしいです。


5.
takano.hateblo.jp

5. くま

くまさんに出会った少女はやがて森の生き物率いて首謀者となる


7. イエス

「イエスタデイ」を真空管でかけながらアラームの針を春に合わせる

8. 鐘

鐘の音が聞こえてくるのに寺の名を知らないままでまた年をとる

id:nigaichocolateさん
タカノさんは雑誌の短歌企画にご投稿されたりなど、挑戦ご活躍がめざましかったですね。どの歌もレベルが高く☆を連打する手を止めるのが難しかったです。

5のほか3「LEDの集合体を見るだけで満足そうなあなたは貧しい」も、前半と後半で読者の予想にデコピンするようなほんのすこしの毒が入っているところがいいです。
7,冬眠の儀式ですね。
8,あまり派手さはない歌なんですが、これがいちばん好きです。


6.
majyonan.hatenadiary.jp

2. 密

これ以上 密度高めて触れ合えば

暁(あけ)には融けて 紅櫛遺す


3. LED

永き時光るとぞ云ふLED

人なき世をも照らす日の来る

6. 石

いくつもの石飲み込んで石を生む

我が生き方と腎臓は似て

id:majyonanさん
ナンさんは途中からのご参加でしたが、毎回真摯に取り組んでくださっているのが伝わってきました。ありがとうございます。
短歌のある日々とない日々とが線引きできる、というのは運営の私もまさにそんな感じです。これからも言葉に居場所を、その場所のひとつとして心に短歌を飼っていただければ、こんなに嬉しいことはありません。
2、艶っぽく、鮮やかな歌ですね。
3、人のいない世界で灯るLEDの街。
6、誰もがいろんなものを飲み込んで生きているんだな、という寂寥感と安堵。


7.
hint.hateblo.jp

2. 密

お年玉百年まとめて請求す姪の理想は北への密使

10.【枕詞】降る雪の

降る雪の調整ダイヤル消えてなお天にまします我らの降雪機

id:ankoroさん
目さんも何度も評しますが、イメージのギュギュっと詰まった「どこを見ているんだ短歌」が面白い方でした。二太郎サンバとかまだ覚えてますね。

2、しっかりものの姪っ子さん、北へ密使に出て何を為すつもりなのでしょうか。
10、「我らの降雪機」と破調にして単語をねじこむところ、これはこれが正解ですね。「天にまします」は神様への枕詞みたいなものですが、そこにひょうひょうと無機物を持ってくるところが目さんの短歌の持ち味なんだろうと思います。

9「かき氷、負けるなこっちはパピ氷、むめも氷とやゆよ氷」とか狂喜がかったのも好きです。パピ氷て。


8.
mah-sokosoko.hatenablog.jp

2. 密(蜜→密に訂正しました!)
目眩すらもよおすほどに密度高い きみと過ごす日の絶望と希望


5. くま
おにあくま ごしょうだおねがいみのがして きみのいのちもみのがすからさあ

10.【枕詞】降る雪の
降る雪の消えぬ間にすら潰えうる それでもぼくら 希望に震え

id:mah_1225さん
mahさんはおひさしぶりのご参加ですね!ありがとうございます。
どの回も背伸びせずご自分のことばで詠んでいらっしゃるなあという印象を受けます。2,10、きっと絶望も希望も知っているけれど、それでも希望を信じているんだろうと思います。
ただ希望だけが詠われた歌よりも共感しやすいですよね。

9.
usaurara.hatenablog.com

5. くま
  ハッカにも存在価値があるのだとのちには知りぬさくまドロップ


6. 石
  石亀の石ひとつだけを友として抱いてみたり足蹴にしたり


8. 鐘
  鍾乳をぺたりと跳ねて笑いける祖母に追いつきたい気もするけど


9. 氷
   新品 まっさらの氷枕の弾力をたしかめてまた仕舞いこみをり

id:usauraraさん
うさうららさんの歌は私小説風、あとがきからご自分の実生活からそう離れてはいない歌なのだろうとお見受けします。
だからこそ「足蹴にしたり」「鍾乳」などのディテールとその次に続くことばにドキリとさせられ、そこでリアルを感じるのです。
ご自身のコラボ活動でもご活躍中で何よりです。

6、石亀と「私」ふたりだけの濃密な友情を感じます。
9,なんでもない動作なんですけど、日常の息遣いを感じる歌で好きです。


10.
amemori.hateblo.jp

3. LED

ヨーソローLEDに照らされた波間に人魚、セイレーン、など

6. 石

石は兄、妹は骨など出来て 三女は肺に蓮の咲くやも

9. 氷

いたいほど耳に 氷柱 つららのきよらかな冬の光を集めた音が

id:amenomorinoさん
にじ子さんの歌は幻想的な世界観を感じさせることば選び、情景のきりとり、テンポで、唯一無二のものでした。ご自分の世界観をお持ちだということは詩作創作において素晴らしいことだと思います。
たとえば6、このきょうだいに起きていることは不穏なんですが、何か物語的、幻想的で美しい。


11.
tanpopotanpopo.hatenablog.com

1. ファー

ファー着てるおまえ達はいいわねと 犬見て思うはだかの猿は

9. 氷

カランカラン氷鳴らして静寂をかき消すふたりの罪は消えない

10.【枕詞】降る雪の

降る雪のアスファルトに溶けて消えゆく如く我も透明になれ

id:tanpopotanpopoさん
タンポポさんは失礼ながら、短歌やなんらかの創作や吐き出す場がないとアカン人ではないかなと思っていて、なぜ私がそう言い切れるかというと、自分もなんとなーくその気持ちがわかるからです。
だから、タンポポさんが「歌詠みは、きっとこれからの自分を支えてくれる」と思ってくれたなら、本当に良かったです。

1、みずからを「はだかの猿」と詠む、突き放した目線がいいです。


12.
baumkuchen.hatenablog.jp

3. LED

 吐く息の白い粒子が街中に満ちると見えるLEDたち

4. グレーゾーン

 もう一歩足りないのなら手を取ってグレーゾーンでタップダンスを

9. 氷

 薄氷を裸足で歩き行く人の国には暖炉もココアもなくて

id:negi_aさん
ねぎさらささんはお仕事が変わりお忙しいなかで、最後の短歌の目に参加してくださってありがとうございました。どんなお題が来ようとも一定以上のレベルで、しかもきちんとご自分の世界観で詠めていらしたのが、本当にすごいことだと思います。
カニ歩きとか上様でネタにもメタにも走らずに自分の世界観守れるってそこまで相当基本で詠んでいないとできないと思うんですよね。

9,暖炉もココアも必要ない国の人々にはなにか代わりになる楽しみがあるのでしょう。ただ「暖炉とココアの楽しみを知る国」から来た者にとっては、ないものを恋しがって傍観するばかりです。


13.
kazagurumax.hatenablog.com

4. グレーゾーン

霙 みぞれやまず冬至の朝はなお昏くグレーゾーンを背負って カラス

5. くま

白菜のまるくまあるく閉じ籠もる 寒さもしくは春を拒んで

6. 石

ねえ、きいて、石でも成長するみたい、うれしい、ずっと側で見てるね

id:kazaguruMaxさん
Kazさんは3月からのご参加でしたね、ありがとうございます!
住んでいらっしゃるところかしら、身の回りにある自然や日常を等身大に詠まれた歌がとても清々しくて素敵だった印象です。「万緑の吾子の歯〜」の句で通じ合えたときはとても嬉しかったです。先達の作品を「つなぎ」にして、時代と場所を超えて気持ちを共有できること、これって短歌俳句の醍醐味だなーと思います。

4,「カラス」の表記や「昏く」と「グレーゾーン」の表現の近接など、もう少し改良できるかもしれませんが、それはさておき詠まんとしている情景がカッコ良いです。
5,「寒さもしくは春を拒んで」の表現が好きです。
6、試みだなーと思いました。


14.
fktack.hatenablog.jp

6. 石

先に出た、にじ子さん作「石は兄、妹は骨」が気に入りました。(※)


8. 鐘

鐘突き堂そばの竹藪で大叔父が両手手放しで立ちションをした


id:fktackさん
fktackさんの初回登場時は、「すげえのきたぞ」というのが正直な感想です。
そしてたしか、「初めて短歌に触れたときの気持ちを忘れたくない」といったことをおっしゃっていて、その気持にとても共感します。
fktackさんのスタイルには賛否両論おこりましたが、表現は失礼ですが「最低限文字数守ってれば参加できるぞ」という一例になり、運営としては助かっていたことも事実です。

6,先に言われた。
8,破調ですけど「した」の完了形に「おう」となりました。手放し立ちションてできるもんなんですかね。


15.
okappasan.hatenablog.com

5. くま

くまさんのお世話をさせていただけて ばあやは幸せにございます


6. 石

キャプつばの石崎君を脳内で 野球のほうの「キャプテン」に放つ

id:okappasanさん
おかっぱさんは後半からのご参加でしたね。ありがとうございます。
良くも悪くも短歌というか「31文字でおかっぱさん」という印象の歌もあったのですが、おかっぱさんのキャラクター自体がおもしろいんでしょうね。ウケました。肩の力が抜けている感じが読んでいて心地よかったのです。

6、すげえ、違和感ぜんぜんない!



後半に続きます。
皆さまの作品一覧はこちらから
tankanome.hateblo.jp

総評後編はこちら
tankanome.hateblo.jp

11月ふりかえり&短歌の目12月のお題募集します

短歌の目第9回11月、35名のご参加ありがとうございました。
ここで運営が感じた11月のふりかえりと、次回第10回12月のお知らせ・お題募集をいたします。



11月ふりかえり

  • カニ歩きに悪戦苦闘か
お題「カニ歩き」で悪戦苦闘の影が見えました。たしかに普通の生活であまり使わないですからね、カニ歩きなんて。
そんな詠みにくい単語なだけに、どなたかもおっしゃっていましたが、その人が出る何かがあったかと思いました。

ほか、参加者さんには個別にスターを付けました。ご自分の会心作と合致していたでしょうか、ちがっていたでしょうか。そういうズレもまた楽しみのひとつですね。

12月のお題を募集します

短歌の目第10回12月のお題を募集いたします。
お題は先月同様、こちらのエントリコメント欄に書き込んでください。
詳しいルールはこちらをご参照ください。


前回も少し触れましたが、運営の事情により、次回第10回12月をもってこの短歌の目はひとまずお休みをさせていただきます。
第0回から休まずご参加くださったいる方はもちろん、過去に一度参加してみたという方、参加してみたいけど…と迷っていた方も、ぜひこの機会に短歌で遊んでみてください。
最後なのでわりと振り幅の大きいお題も歓迎したいと思います。お待ちしています。

それでは、次回第10回、(ひとまず)第一期はラストの短歌の目12月でおあいしましょう。