はてな題詠「短歌の目」

毎月1回、はてなブログで気軽に短歌を詠むイベントです。

「愛してる」を使わずに愛をつたえる―9月短歌の目総評です

今回は39.5名のご参加となりました、短歌の目です。初参加の方から常連の方まで、ありがとうございました。
個別の感想はブクマでお届けいたしました。今回は、総評にかえまして少しばかりのtipsと、今後の参加にあたっての注意点を。
だいたい今読んでいる永田和宏NHK短歌 作歌のヒント」からの受け売りです。右から左に受け流すだけです。

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tips

・「愛してる」を使わずに愛情を表現してみよう

短歌は基本的には間接の詩型です。説明を嫌います。

たとえば

亡き夫の財布に残る札五枚ときおり借りてまた返しおく 

野久尾清子「南日本新聞歌壇」(永田和宏「作歌のヒント」収録)

この歌には亡くなった夫が愛しいといったような表現はありません。けれど詠み手が亡き夫を今も大切に思っていること、彼女の心の中に存在し続けていることがつたわる歌です。

「愛しい」「せつない」「かなしい」「くやしい」「きれいな」「素敵な」「いじわるな」といったことばは、個々の体験から発生した感情を説明・伝達の便宜上大まかに分類したものです。そこからもう一歩踏み込み、具体に描写することを意識して短歌をつくってみてください。そうすることで、詠み手であるあなた"だけ"の、愛しい、せつない、かなしい、くやしい、美しい、きれいな、素敵な、そんなショートムービーを読み手に魅せることができるはずです。


・五七五七七の基本定型を守ろう

「短歌の目」の会訓は「まずは五七五七七のリズムを守れ」これにつきます。私の思う理由は2つ。守らないと、


・語彙力がつかない
・自他の歌のポイント(焦点)がわからない

という弊害があります。

その子二十歳櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
与謝野晶子

上の与謝野晶子の句は1句目が「そのこはたち」六字と字余りの破調、非定型なんですが、定型で詠む基本をおさえているからこそ、「ドンッ」と最適の位置にアクセントを置けています。



・定型に慣れたら推敲してみよう

数回参加して、短歌の定型に慣れてきた方もいらっしゃると思います。最初はなんとなく作ってきた短歌でも、「お、いいじゃん」と思えるようになってきたのではないでしょうか。慣れてきたら少し時間を置いて、推敲してみましょう。それは詠みたい情景に最適な語彙か、もっと踏み込んだ表現はないか、説明過多ではないか。
一日寝かせると少し客観的に読み直せると思います。


・「イケる」と思ったら外部短歌コンペにどんどん応募しよう

短歌の目は初心者から経験者の方まで幅広く参加しているのが楽しいところですが、経験者の方、「イケるな」と実感のつかめた方はどんどん外部の短歌コンペに応募してみてください。
たまには文章を書かせてくださいのTakano (id:nigaichocolate)さん、おそくなりましが短歌研究新人賞おめでとうございます、私も倣ってガンガン応募してみます。

・先達歌人の歌を読んでみよう

永田和宏「作歌のヒント」にて、上達の秘訣はとにかく先達の歌を読むこととありました。初心者の方は、国語の教科書でならった歌から好きな歌人を探し直す、数珠つなぎで見つけるのが楽しいのではないでしょうか。

ポケット詩集

ポケット詩集

教科書でおぼえた名詩 (文春文庫PLUS)

教科書でおぼえた名詩 (文春文庫PLUS)



今後の参加についての注意点

・提出受付は二日目からにします

エントリ提出の速さは評価に関係ありません。
時間を置いて推敲することをおすすめします。

・二回め参加以降お題と定型を無視した歌は不掲載とします
・他参加者への感想は当該者ブログのコメント欄もしくは感想エントリで直接お届けください

お題募集について

10月のお題を募集いたします。
今月は初心者さんから詠みにくかったという声をいただきましたので、運営ももう少し選定に心配りをします。よろしくお願いします。
※このエントリコメント欄にお題をご記入いただけるとありがたいです!!

お題のルールはこちらから
はてな題詠短歌のお題を募集します - はてな題詠「短歌の目」

短歌の目第6回8月の総評および9月のお題募集です

管理人です。
短歌の目第6回8月もたくさんのご参加ありがとうございました。
個別にブコメで感想も付けてまいりました。この短歌すてき!キュンキュンする!と思ったのを職権乱用でどストレートに伝えることができて満足です。
以下全体の総評、怪談短歌について、次回のお題募集です。

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全体の総評

今回はわりとハードル高いかな?と選者自身も思うようなお題をあえて選んでみましたが、短歌のネタになりそうなイベントが多い夏のおかげかキュンキュングっとくる歌が多かったです。

あと逆に「『くきやか』というお題を見て参加しようと思いました」という方もいらっしゃって、「お、おお!」となりつつ、ハードルの高低はこちらが勝手に判断しちゃいけないよなーと思った次第です。

怪談短歌について


「そうだ、怪談短歌、詠もう」とJR東海のCMレベルの淡い思いつきで枕詞の枠に入れてしまいました。

「怪談短歌」は、恋愛短歌もそうなんでしょうけど、三十一文字のなかでいかに言いすぎずに相手に想起させるかを練習するのによいテーマですよね。想起させたい事象もだいたい検討つくから読み手もイメージを共有しやすいし。

怪談短歌については2014年に歌人東直子さん、佐藤弓生さんん、石川美南さん選による一般公募集「怪談短歌入門」も出版されています。興味のある方はぜひお手にとってみてください。おもしろいですよ。

こんなのとか好きでしたね。

真っ白なうどんかき分け叫びます中にあの子がいるはずなのよ 鮫漫坊
(怪談短歌入門より)
「怪談短歌入門」から好きな短歌を7首 - nerumae

参加のきっかけと作品の巧拙について

この「短歌の目」は「短歌やったことないけどやってみようかな」というところから気軽にスタートしてほしいと思っていますので、特に最初の巧拙は問いません。ブログで書くことがないときの穴埋め気分での参加もOKだし、短歌本のアフィリンク等も別に構いません。
間口は広く、「お、短歌、おもしろいかも」とそこから深淵にはまっていく人がひとりでもふたりでも多く増えてくれたら管理人の思うツボです。


読みこむ側としては「ああ、この歌はお題で情景がおもい浮かばなかったな」とか、「創作のかたちを借りてだからこそいえる胸のうちだな」というのはわかります。「こういう情景を詠みたいんだな」というのも伝わるし、「もっとちゃんと解像度高く表現したい!」という意欲も歌を通して感じます。
そういう向上心や「伝えたいことがあるんだけどなんだか上手くいかないな」というジレンマのある人にはこちらもヒントや背中押しをしています。できる範囲でですが…。
せっかく真摯に取り組んでくださっているので、今後の感想コメント付けはそういった方々に時間を多くあてていきたいと考えています。


第7回9月のお題を募集します

「短歌の目」では皆さまからのお題を募集しています。
たくさんのかたからお題をいただくことでより多様な題詠短歌10首ができあがります。ご協力よろしくお願いします。

※次回9月のお題はこのエントリのコメント欄にご記入ください!!

お題投稿について詳しいルールはこちらから
はてな題詠短歌のお題を募集します - はてな題詠「短歌の目」


次回「短歌の目」お題発表

お題発表 9月1日(火)深夜 0:00

募集〆切 9月10日(木)深夜23:59

です。どなたさまも気軽にご参加ください。


川添(id:kkzy9)さんと「短歌の目」について音声対談をしました。私がちょっとどもってたり聞き苦しいですが、川添さんの短歌をつくるときの心がまえ3つがかなり核心をついていたのでぜひ聴いてみてください。

lfk.hatenablog.com


オフラインで聴く方法も紹介されていますので通勤のときなどに。

無料で誰でもできる、youtubeによるwebラジオ放送 - Letter from Kyoto



こちらへのご参加もおすすめしています!

年内百首題詠短歌を詠もうblog.goo.ne.jp


毎月20日スタートnovelcluster.hatenablog.jp

短歌の目7月の感想・お題募集です

管理人です。短歌の目第5回7月へも39名のご参加ありがとうございました。今回もお題提供いただいたおかげでバラエティ豊かな歌を楽しませていただきました。

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photo by Moyan_Brenn


恋の歌

今回は季節柄か、全体的に情熱にあふれた歌が多数あった印象です。
ほのエロスな艷歌から恋の歌まで。艷歌は情熱を表現しつつも、客観的に伝わるように醒めていないと歌えない、またエロスとなるかシモネタになるかもさじ加減次第という、実は腕の見せどころな分野ですね。個人的にはイケイケどんどん、いいぞみんなもっとやれでした。

無自覚de与謝野晶子

あとは一番おどろいたのが、おかっぱ (id:okappasan)さんのこの歌


10.【枕詞】
ぬばたまのツヤ髪疎む10代は傲慢なれど脆く愛おし

夏の思い出~「短歌の目」~ - DAILY OKAPPA




与謝野晶子

「その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」

とほぼ意味が同じということです。おかっぱさんは無自覚とのことだったので、これはつまりおかっぱさんは与謝野晶子と同じ感性をもっている、ほぼ与謝野晶子ということですね。すごいなあ。


もしかしたらこんな発見が他にもあるかもですね。クラシックをフィーチャーしている方も多いし、改めて古典〜近代短歌もちゃんと触れたいと思いました。

五七五七七の定型を守るとこから

あとは初心者のご参加も多かったので改めてちょっと技巧的なお話を。

・10首中10首ともホームランを狙わない
・最初は五七五七七の定型を守っていればOK

くらいを、最初は意識しとけばOKです。




ではでは、また8月の短歌の目、もしくは虚無透さん主催で毎月20日スタートの短編小説の集い「のべらっくす」でお逢いしましょう。

novelcluster.hatenablog.jp



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8月お題を提供していただけると、より豊かな短歌の場になりますはてな題詠短歌のお題を募集します - はてな題詠「短歌の目」