はてな題詠「短歌の目」

毎月1回、はてなブログで気軽に短歌を詠むイベントです。

短歌の目3月感想です21−33

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第1回短歌の目3月、エントリ21−33のかたへの感想です。
投稿一覧はこちら。

3月の題詠短歌10首および投稿作品ご紹介です - はてな題詠「短歌の目」



感想エントリ1−10はこちらから
短歌の目3月の感想です01−10 - はてな題詠「短歌の目」


感想エントリ11−20はこちらから
短歌の目3月感想です11−20 - はてな題詠「短歌の目」



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3月の題詠短歌、詠んだったー♪ - 枯れないように


7.線

君はなぜ 苦しむ僕に 気づかない? 線路の向こうで 笑うゆみちゃん


前回「ウリッキュア♪」ですべてをかっさらっていったわた子さんですが、今回は大人しくなった分狂気度が増している気がします。
好きなあの娘が誰かとラブホに入っていく情景以降すべて「僕」の幻想なのではないか、リアリティのなさが逆に怖いんですね。
「ゆみちゃん」「愛ちゃん」は音合せで特定の誰かを指しているわけではないでしょうし多分意図的ではないでしょうけど、「神聖かまってちゃん」の「笛吹き花ちゃん」とか「知恵ちゃんの聖書」などと用法がかぶってて管理人は勝手に少しせつなくなっておりました。



22

企画にのって短歌を詠んでみたよ2 - 今日の良かったこと

10.信号
やっとこさ 信号覚えた次男坊 赤は止まって青で進んで


こんな物言いは不遜なのですが、りょうさん前回よりレベルアップされてる気がします!
!や?を多用した日常会話的な歌が多いのが特徴ですが、しっかり音と57577のリズムに合ってるんですよね。
中でも10は説明的な歌から一歩抜けて、次男坊くんの止まって、進んでだけど一歩一歩着実に成長している様子、それを暖かく見守っている目線が感じられて好きです。


23

【3月】はてな題詠「短歌の目」 - 本の覚書

4.ひとり言
雪隠の奥の個室のひとり言 同僚君きみは何をたくらむ

k_sampoさんは短歌関連の本をお読みになり臨んで下さったということで、なるほど初参加作品よりもかなり様相が変わられましたね。
実験的な試みも感じますし、日常から目線を離れた、信仰につながる歌が多かった印象です。
6.羊
ヘブライ語】シャローム:平和 【アラビア語】サローム:平和 羊は歌う 

に☆が集まったのは辞書的表記というもの珍しさだけでなく短歌としてちゃんと美しく成立しているからじゃないかなと思います。この表現方法なのにちゃんと韻律に則っていること、辞書的な表記からスケールの大きい中東に思いを馳せ、対立する二国間の言語での「平和」という言葉と羊という共通点を並べていること、「歌う」と結びつけることで説教(川柳)くさく終わらずに成功してること、ですかね。

じゃあなんで私が4のひとり言を選んだのかというと、周りの歌を比較してそのギャップが楽しかったのと、「この同僚前回の釦がはじけ飛んだ奴じゃね?」って物語を勝手に補完しちゃったからです。
あと音数合わせもあるのでしょうけどトイレを「雪隠」と表したのも大仰な権謀術数を匂わせていいです。トイレできばりながら戦術を考えてたのは武田信玄でしたっけ。


24

はてな題詠「短歌の目」3月 - 妄想七号線


5.揺らぎ
真っ直ぐな声が一瞬やや揺らぎ 歌っていたのは人だと気づく


こちら、稲沢さんの本意とは違うかもしれませんが、私はボーカロイドの歌を聴いててこんな体験があったので選びました。
初音ミクの歌った歌を生身の女性が歌ってるものも最近ではあって、作業しながら聴いているとどっちがどっちだかわからなくなるんですよね。ビブラートの不完全さとか声のかすれとか、オリジナルボカロ曲にはない転調が入ったりしたことで「あ、これ人だ!」と初めて気づきます。
逆にいうとそれまで気づかない、人間がボカロを目指す時代になったんだよなあと思うとなんだか不穏なような。

他の歌について、もう少し具体性を織り込んでもいいかなあと感じました。6は歌の背景を読んでから再読するととてもあたたかく感じました。その背景解説なしでも響くように31文字で構成できたら最高かな?と。


25

はてな題詠「短歌の目」 3月♡ - バンビのあくび


4.ひとり言

もういやだひとり言吐くあなたみて夢を取り出すポケットの中


5,8のようにいつものえこさんとはちょっとだけ違う不穏さを垣間見たまま終わる歌もいいのですが、全体の中で4が一番えこさんの持ち味を表している歌かなあと思い選びました。
「ひとり言」という単語からは、私含めだいたいみなさんネガティブなイメージを連想していらっしゃるのですが、それを汲み、掬いとる側に立てる芯の強さを感じます。
これはおそらく他のブログ記事の内容からも私の脳が勝手に補完してしまっている結果で、えこさんご本人は「そんなイメージでばっかり見られたくない!」と思っていらっしゃるかもしれませんが…。
あと2、私も「えっ!えこさんが艶歌!?」とびっくりしてしまいました。意図はされてないようです。エロいのは私でしたスミマセン。



26

3月の題詠短歌10首 - 乳飲子を小脇に抱えて


5.揺らぎ

如月はストーブ越しに揺らぎ見る 弥生にはいれば春の陽炎


Kazさん初参加ありがとうございます!わーいわーい。
日本語の練習といいつつ最初からしっかりした短歌をお詠みになられていらっしゃる、というのが第一印象でした。
5は「揺らぎ」という語感の美しさにあわせるように暦を「如月」「弥生」表記にしたところ、春の陽炎を静かに心待ちにする気持ちがみえかくれして美しかったです。

あとは10の歌も好きなんですが、これはもしかしてお産の歌でしょうか?


27

はてな題詠「短歌の目」三月 - イグアナガール


9. 年度末

年度末 駅を占拠す リクスー達 闘いはまだ 始まったばかり


いぐ子さん今回57577ビッタンコですね!

4のひとり言を飲み込むちょっとせつない歌、8のバクへの心配も好きなんですが9を選びました。
理由は就活生を「リクスー」ってあまり聞きなれない、短歌でもあんまり目にしない語句に置換することで、歌全体の意味がわかるまでいっしゅんSFバトルものみたいに聞こえてくる、そこが面白いと思ったからです。
テラフォーマーズみたいな面持ちで駅に向かう就活生たちを想起してしまいました。ジョウッ。


28

ぼくのかんがえたスーパー短歌(「短歌の目」第一回) - Qの箱庭


7.線
この線にお並び下さいお客様 詰めてもレジは速くなりません


きゅーいんがむさんは冒頭でも振り返りでもおっしゃっていた通り、特別ではない「日常」を歌った10首でした。
ひとつひとつの歌にはそんなに目新しい表現つきささる歌がある、というわけではないんですが、10首ぜんぶを通して読むときゅーいんがむさんの働いている世界がすごくリアルに響いてくるんですよね。
お題しばりのある題詠短歌でここまで自然に日記短歌詠めるのって実はすごいことじゃないかなと思います。

「ヨーグルトの中にもバクテリア」って勤務中にじわじわ考えているとこも好きなんですが、やっぱりわかりやすいのは7でしょうか。
たぶん読者のほとんどはこの呼びかけられる「お客様」側だと思うんで、レジの人の心の声をのぞいてしまったドキっと感と、「そうよね速くならんよね」というおかしさがあります。



29

はてな題詠「短歌の目」、3月も参加します!&少し音楽の話 - きまやのきまま屋

1.雛
狭い部屋 ケースに並ぶ雛人形 姉と私が繋ぐ手の熱


きまやさんは前回同様「手」へのフォーカスの仕方がお上手だな、と思いました(前回は 1.白「東北で生まれ育った甥の手は、驚くほどに白く暖か」がグッときた)。

「私」はどんな気持ちで姉と雛人形を見つめていたのか、狭い部屋、手の熱を感じるという触覚へのフォーカスでなんとなく静謐な空気を感じます。
あとは4、猫も寝言いうんだなー!と単純に驚いてしまいました。あとは、歌にのせたい気持ちはしっかりお持ちだと思うので、慣れてきたらでいいのですが「要らない」という言葉を使わずに「要らない」という気持ちを表現する、「指示をされたくない」という言葉を使わずに意思を表現する、のを意識してみると、もう一段階グッと来る歌が出来上がるのではないかなあと感じました。


30

はてな題詠「短歌の目」 3月のお題 - 有限な時間の果てに

7. 線
画用紙に 描いた線は 力強い キミの行き先 光溢れる


ぽっぷーんさんは小さいお子さんがいらっしゃるんでしょうか、子どもさんを詠んだ2作がほほえましくもグッときました。
特に7は画用紙に書いた子どもさんの力強い線とその未来を重ねあわせた構図があたたかいし、とても素敵です。字余り字足らずなどの細かいところはこれからテクニックやコツをちょっと覚えれば格段に良くなるので、ぜひ心に残したい情景をこれからも詠んで、読ませていただければなと思います。


31

はてな題詠「短歌の目」3月 - あかり牡丹

3.夕

 帰り道コロッケ齧るブレザーに 人には人の 夕まずめあり


meibotannさん10首のご参加ありがとうございます!いい歌を詠んではる!というのが率直な感想です。

2,6,9、特に9「 済んだもの 在庫・伝票・不意のキス 年度末には綺麗にしましょう」なんて超ドキっとさせられて「そのまま月9のドラマにして!いや水10か!?」と思うくらい素敵です。
でもハっと感ドキっと感につられずに2回めに読むと、3の歌の滋味感がじわじわ染みてくるんですよね。

夕まずめ」とは日没の頃、魚の活性が上がる時間帯のことだそうです。
帰り道、ブレザーということは高校生男子かな。コロッケをかじりながら生き生きとする若者を見てその様を肯定する視線があたたかくてとても好きです。大人だなあ。



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感想 はてな題詠「短歌の目」 3月のお題に参加してみて - こじらせ女子のつまらない出来事


1.雛
デート重ね三回目だからいけるかと 雛形どおりにいかないんだね


前回も感じましたがてぃぐてぃぐさんは恋愛を詠んだ歌に奥行きとリアルと血肉があって良いなあと感じます。
1は、私「デートも3回重ねれば、彼からつきあってと申し出があるだろうと思っていたけど、そんな雛形通りのもんじゃないんだね」と解釈してたんですが、ご本人の振り返りを見たら逆だしもうちょいナマナマしかったですね。3回デートしたとしても「付き合いましょう」という文言は必要ってのが普通の感覚だち思うんですが、雛形も人によってまた違うものなんですね…。

3は源氏物語を知っていて初めて意味が解ける歌で、ちょっと勉強してきます!教養があるとさらにおもしろくなるのも短歌や物語の楽しいところですよね。




33

短歌・参加 できてるのかな? - 頼朝の自由日和

10.信号

信号を 手を挙げ渡る 小さな子 無くした行動 見ていて和む


頼朝さん、初参加ありがとうございます!
>こんなところでしょうか?そしてこれでいいのでしょうか?もはや心配要素しかないですね
バッチリ大丈夫ですよー。最初は57577のリズムはめから楽しむので十分だと思います。

手をあげて信号を渡るという行動、いつから辞めてしまうのでしょうね。たしかに小さな子は誇らしげに真面目な顔をして手をまっすぐピンと伸ばしていて、ほんと和みます。
頼朝さんの詠まれたように、こんな感じで短歌って日常のちょっとしたとこ、和むとこ、淋しいとこ、不思議なとこ、不穏なとこを留めていくのにちょうどいい長さのツールだと管理人は思っています。
楽しくなってきたらぜひ次回以降もご参加いただけると嬉しいです。



おわりに・お知らせ

今回は前回をきっかけとしてこのイベント以外でも短歌を詠まれるようになった方、他の参加者さんに刺激を受けて確実にレベルアップされている方、ご自分で学び始めた方など見受けられて嬉しかったです。

その一方で考えすぎて良さを崩してしまったり、きれいな表現に走り過ぎてしまった例もあったかなと。そういう「実験」のあとも見えるのがまた楽しいです。

ことばを自分のものとして自分の持ち味を出力するには、やっぱり新品の靴をガンガン履いて使ってなじませるみたいな作業が必要なんだと思います。そういう経過も含めて楽しく読ませていただきますので、おそれずどんどん詠んでくださいませ。



次回は4月1日0:00お題発表、4月10日23:59〆切です。

お題も募集しております。ぜひ運営にご協力くださいませ!

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