はてな題詠「短歌の目」

毎月1回、はてなブログで気軽に短歌を詠むイベントです。

2月投稿短歌の感想じゃん21−30

エントリナンバー21−30の方の投稿作品感想です。今回はご経験者の方が多く、3-4つに絞るのが苦痛でした。どれもよい!

後半に管理人から初心者の方向けtipsがございます。今回は「短歌の筋肉」について。

 

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2月の投稿短歌をご紹介します - はてな題詠「短歌の目」


感想1−20

2月投稿短歌の感想です1−10 - はてな題詠「短歌の目」

 

感想11−20

2月投稿短歌の感想です11-20 - はてな題詠「短歌の目」

 

感想21−30

 

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はてな題詠「短歌の目」 - 冬色の脈

 

5.板
 少しだけ目線をあげてみてみたら ビート板だけゆらゆら浮いてる

7.外
 この外道 人の風上にも置けぬ いますぐ雪見だいふく放せ

10.卒業
 こないだの卒業式は帰り道 落ちてる小枝を拾うなどした。

 

私、ChemicalXさんは詩歌に精通してると勝手に思い込んでいたんですが、短歌はおそらく初めてということで意外でした。

 

全体的にこの人独特の世界があって、御伽話みたいなんですよね。現実への執着心が感じないとこがたいへん好きです。それだけに雪見だいふくへのその異常な執着心はなんだ

9の歌も好きなんですがリズム合わせが惜しいので次点に。ちなみに「お父さん ねぇお父さん」なシューベルトのオペラ「魔王」で再生しました。


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2月のお題 - はてな題詠「短歌の目」 - 本の覚書

 

3.雪

雪国は雪を楽しむ振りをせよ いつか脱出したいにしても


7.外

口にしたものみな外へ吐き出して 入院をして 夜毎のおねしょ


9.おでん

ひたひたの汁にまどろむおでん種 酒は飲むべし 至福は見るべし

 

 

1のしろうるりの解説から詠み手さんのルーツを知ることができ、それからもう一度短読み直すと違う味わいになる歌がいくつかありました。

9とか山頭火っぽいなあと思ったらやっぱりバックボーンが漂浪者でした。今現在も現実的にはどこかに所属しているとしても精神的に自由なのでしょう、自分の感じたものをそのまま謳歌している姿勢が素晴らしいです。

 


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はてな題詠「短歌の目」第0回 - この国では犬がコードを書いています

 

3.雪

雪は死ぬ 生きとし生けるものすべてつつんで凍えさせてから死ぬ

 

4.あなた

いますこしあなたのことがわかるならおんなにうまれかわってもいい

 

5.瓜

あまやかなしずくしたたるまくわうり だらだら汗を垂らしてかじる

 

6.外

着け外し可能なものばかり集めて きみはそうして今もひとりだ

 


難しいとおっしゃいつつセンスある!と思ったらご自分でも日記的な短歌を詠まれている方でした。12月短歌の

 

せせり出す人身事故の四文字はさみしいさみしいさみしい夜だ

 

が凄く好きです。

4を「もうすこし」ではなく「いますこし」にするところとか、5の歌の官能さとか、6の寂しさとかとても素敵です。題詠以外にもまとまった歌を読ませていただきたいと思いました。

私がこの企画を始めたのってこういう方を見つけるためでもあったので、念願かなってウッシッシです。よろしければ今後ともご参加くださいませ。

 

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はてな題詠「短歌の目」 2月のお題 - 有限な時間の果てに

 

4. あなた

離れない あなたのことが 頭から なれるだろうか あなたのあなた

6. 瓜

売れ残り 数をかぞえて にらめっこ 店長曰く 瓜はよ売れわれ

 


4の「あなたのあなた」というフレーズを主付いたのが素晴らしいなと思います。全体の中で6の後半句のスピード感、「売れわれ」のテンションの違いが異質すぎて最高に心に残ります。すごい殺気立ってたんだろうな〜。


>なかなかいつもと違う頭の使い方をしました。考えるのが楽しかったです。自由に思考するのって難しいことなんだと改めて痛感しました。

 

そうなんですよね、短歌ってふだんと違う頭の使い方なんですよね。ご自分の経験した情景の切り取りでもいいし言葉遊びでもいいし、31文字の制限の中でぜひまた自由に遊んでみてくださいまし。

 

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短歌を詠んだよ - 狭筵

 

2.チョコ
催事場のカラフルでただ無機質なチョコを手にいま物語起つ

 

4.あなた
たまにだが、あなたの瞳にドキッとする。普通にお仕事中なんだが。

 

5.板
板からはもうたどれないつくられるまえの樹としていきてたかたち

 

アイコンとidからは想像つかないほど味わい深い。好きなタイプの歌詠みさんです。

 

2、「カラフルでただ無機質」という対比と、「これから物語が起こる」という静かな高揚感がいいですね。

4、ストレートでシンプルなんだけどこういう日常のエアポケット感がすごくいいですよね。「普通にお仕事中」の一瞬が詠み手にだけわかる度合いで非日常になる。
5は思わず板をなでて思いを馳せている姿が想像できました。せつない。


あと「おでん」って本当に韓国語でもおでんなんですか!?

 

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はてな題詠「短歌の目」-短歌とかけまして、英語学習とときます、 - えいごきらい。

 

3.雪
雪ふれば 高速渋滞 電車遅延 ラジオは急に 映画の話題へ

 

8.夜
珈琲と 夜の帳で 段々と 覚めゆく頭と 反比例の丸

 


出、出〜wwwwww短歌×TOEIC縛りの変態歌人奴〜〜〜wwwwwww

褒め言葉です)

おでん鍋みてもPart1対策が浮かぶ猛勉強のさなか、10首も詠んでいただいてありがとうございます。

3、雪で渋滞遅延した電車の空間に閉ざされて、非日常スポットにはまってしまったんですね。イヤホンで聴いてるラジオから遅延情報でもなんでもなくまったく関係ない映画の話題にうつるの、よく考えたら怖くね?って思います。

 

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短歌の目 2月題 - 妄想七号線

 

4.あなた
あなたには言えない事が多々あって 短歌にしたらもっと言えない

 

5.板
気紛れにかまぼこ板に花を彫り 抉った指の傷を見ている

 

8.夜
Web上の秘密結社に集う為 言葉を研いで削ぎ落とす夜

 

 

ご参加ありがとうございますー。川柳・短歌を現在進行形で詠まれている方なんですね。
短歌作りが楽しくなっているのが後半のメタ的作品で伝わってきてうれしいです。


あと上手だなと思ったのが5、彫ったのが「花」だというところ。

「血」という単語は出ていないのに花が開くようにあとから鮮血が連想されるので、ここは「花」以外ではダメだったでしょうね、事実だとしてもいいカンジです。

 

それから、既出の有名な歌をモチーフにして短歌を詠まれるのはOKですよ〜。

脚注やふりかえりでモチーフにした歌をご紹介くださると曲への興味も沸くので、親切ですね。

 

 

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短歌詠ませてください(短歌の目 第0回) - たまには文章を書かせてください

 

5.板:

黒板消しクリーナー ON 飽きるほど一緒に帰ってくれますか OFF

 

8.夜:

こっそりとカップラーメンから出づる湯気よ ひとりの夜を救えよ

 

10.卒業:

もう二度と この窓ガラスに君の名を書くことはない 卒業前夜

 

 

短歌、詠んでください(切実)。


穂村弘さんで短歌の世界に入ったんですね。私もですー。
5はどこにも見たことがない表現で面白い!と思いました。
8は湯気が魔法のランプのようです。カップラーメンから出る湯気に救いを求めるせつなさも好きです。暗い部屋の中に立ち上る湯気とそれに相対する詠み手さんが見えます。


「卒業」のお題はそれぞれの個人的な過去、学生時代のイメージを間接的に知ることができて選んでよかったなーと思います。窓ガラスや他のモチーフで寂しさを上手にあらわしてくれてます。

 

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短歌か狂歌かよくわからないままに - artessaのブログ

 

5.板

分厚しと いえど板子は 一枚で 底の底から 沸ける魂魄

 

7.外

外街道 走りて去るは 物の怪の 影ばかりなる 限界集落

 

10.卒業

卒業は 業(ごう)を卒(お)えるか その業は 重荷の如く 背負われて行け

 

 

古語の使い方及び本歌取りがお上手!しかもちゃんとご自分の気持ちまで載ってる!ということで非常にレベルの高い作品でした。しかもこれがブログの初投稿ということで、嬉しい限りです。

 

特に10の歌は家康の遺訓を本歌取りしたものということで、かなりいい歌だなと思いました。

家康の遺訓は

 

「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。」

(人の一生は重荷を背負って行くようなものだから急ぐなよ)


で、この歌を管理人的に意訳すると

 

「形骸的に卒業式をしたからって人間の業(学びとか生きることとか)は終わるものではない。人生といっしょにしっかり背負っていけよ」

 

ってことでいいでしょうか。力強く、良い歌です。

 

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タンカースナイパー - むっつりスケベ

 

2.チョコ
10代はチョコに困ったことがない ロッテ陳列パートの母

 

3.雪
雪道をわだちに沿って走る僕 たまにはそこからはずれてみたい

 

6.瓜
たまに買う野菜スティック味噌マヨの きゅうりが多いセブンイレブン

 

 

けっこうパンチのきいた作品のあとに力の抜けた等身大の歌がきてこの並びも運だよなあと思います。
なんでもない歌が多いようですが、全部リズムの破綻がないしなんでもない日常にちゃんと視線を向けられているのがいいです。あとブログ名が正直!

 

 

 

tips3:傑作1歌より凡作10歌で短歌の筋肉を鍛える

 

今回題詠のお題ノルマを10首にしたのは理由があります。それは「短歌筋」を鍛えるためです。

1作1作丁寧に作って表現技法にこだわって良い短歌深い短歌をつくろうとするよりは、拙速でもいいから「お題から沸いたイメージを31文字に切り取る」「自分の感情を31文字でパパっと表す」練習をたくさんしたほうが短歌のリズムや感覚を身につけるにはいいと思います、とくに初めのうちは。

 

 最初からいい歌を詠もう〜と意気込んでしまうと肩に力入っちゃって硬い歌だったり、ちょっと背伸びした歌になってしまったり技巧に走っちゃったりするんですよ。でも最初からみんなそんな傑作詠めるわけないし、技巧を凝らした歌がかならずしも心に響くわけでもないんですよね。

 

初心者の方はまず気軽に定型で詠む練習を。技術はあとからの振り返りで身につけていく、でもいいんじゃないかなーと思ってます。

これは去年私自身が「題詠blog2014」でお題100首詠んでみて感じたことです。

私は写真撮ってinstagramにアップするくらいの感覚ですかね。

 

ということで「タンカースナイパー」のむっつりスケベさん、じゃない、ブログ「むっつりスケベ」のむっつさんもおっしゃるように、定型とお題を詠みこむルールさえ守っていれば弊企画ではフリーダムに詠んでくださって構いません。今んとこは。

 

よかったら題詠blogさんにも参加してみてね!

題詠blog2015