2月投稿短歌の感想です11-20
前回の感想が「面白い」といわれ嬉しい管理人です。
でもアレ、私の選評が面白いんじゃなくてご投稿の作品が面白いんですよw
さて2月お題にご投稿いただいた短歌の感想です。エントリーナンバー11〜20です。
最後に初心者の方向けに管理人からtipsをひとこと。今回は「定型」についてです。
作品一覧はこちら
エントリナンバー1−10の感想はこちら
感想11−20
10年前の秋に詩を書き始めたから今回参加できる「第0回」はてな題詠「短歌の目」参加作品(集) - のほほん気紛れ詩歌い
1.白
願望の 白い車を 買った時
最初の助手席 今の妻
4.あなた下の名で 彼女に言われ 時を経て
「あなた」を越えて 「パパ」と言われる
1,4の奥様について歌った歌が情景豊かでいいですね。10首全体を通して天賦さんの穏やかで経験豊かなお人柄を伺えます。
詩歌も嗜んでいらっしゃるということで、ほかにも抜群のドラマ性を感じる歌がみられます。ご自分に還元してみたり物語の主人公になったつもりで詠める単語数を増やしていけば天賦さんワールドが広がりそうだなーと思いました。
やはりブログ、詩歌、短歌、創作、すべて相関性があると思うので今後も楽しみにしております!
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第0回「短歌の目」 2月のお題10首 - 漢前女子と言われ続けたい。
2.チョコ
街中に 甘い香りが立ち込めて 思いの行方 来月の宿題
5.板
板につく 立て板に水 板ばかり似合うあなたのまな板ボディー
6.瓜
うりうりぼー 猪と聞き思う人を いつのまにやら忘れられていた
2、バレンタインデーとホワイトデーを歌った短歌ですね。1ヶ月待つ時間を「来月の宿題」と喩えるとこんなにも情緒豊かになるんだな〜と思いました。
ノルマを10首に決めた理由は、どうしても1首ごとだと「傑作を詠もう」と肩に力が入ってしまうからなんです。これは実体験からです。
緑茶iさんも5,6首めあたりから「板」で言葉遊びをしてみたり現在の「わたしとあなた」の関係から出て過去を振り返ってみたりと、肩の力が抜けたのか世界が広がって読者として読んでいてとても楽しかったです。「うりうりぼー」が好きw
素敵なイラストもありがとうございました!歌の世界を絵でも表現できるのは強みですね。
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はてな題詠「短歌の目」に参加してみる - Letter from Kyoto
3.雪
「見る分はいいのにね」って雪のこと扱う僕ら、大人になった。
6.瓜「ハンバーガー、ピクルス抜きで」頼むのにサラダの胡瓜何事もなく
8.夜
あの人も深夜一人で歩いてる。知らない人を仲間と思う。
KAWAZOIさんはご経験者でしょうか?台詞といい音のリズムといい独特の句読点といい、全体的にご自分の世界がすでにしっかりあると感じます。
おもしろい短歌って「世界あるいは人生のエアポケット」みたいなものを見つけて、かつそれを的確に描写する力を持っているんですが、まさにそれを自然体でやってる感じですね。
そう、ピクルスは抜いてと頼むのに胡瓜は気にならないんですよね。深夜に浮遊してる他人への妙なシンパシーもわかります。
こんな感じの「小説のテーマにするには小さすぎるけど、生きてく上でなんか気になる」かつ、他の人にも「あー、そう言われれば、わかる…!」ってのを、よければこれからも詠み続けてほしいなと思います。
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5.板
キミが消え心の傷を癒すよに まな板のキズ優しくなでる
6.瓜
麗らかにじんわり染みる冬瓜と桜海老炊く君の横顔
8.夜だからさぁあなたにちゃんと言ったじゃない夜中に電話かけて来るなと
えこさんはブログも創作もコンスタントに書かれているだけあって、31文字の中でドラマを作ることがお上手だなーと感じました。しかもそれがすべてわかりやすくスッと伝わるという。特に6は小物使いとならぶ漢字、表現の美しさが秀逸でした。
あともうひとつすごいなと感じたのは、えこさんってブログも創作も短歌も「えこさん」として目線がまったくブレてないんですよね。
人格のズレやねじれがないまま、それでも日常の細やかなことをしっかり受容していらっしゃる。すべて自分自身として物事を受容し表現するのは、簡単なようでいてよほど芯がしっかりしてないと難しいんじゃないかなーと全部ブレブレの私は思います。
「チョコの波に飲まれろ」とか「ちくわの穴から輝け世界」とかかなりイイカンジのフレーズが初回から出てきてるので、今後ももっと詠んでみてほしいです。
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はてな題詠「短歌の目」 2月のお題に参加します - こじらせ女子のつまらない出来事
3.雪
凍りつき 孤独な夜を 駆け抜けて 自由になった 白銀の城
6.瓜
無垢な木の 机撫ぜふいに 思い出す 破瓜の痛みは 遠い記憶に
8.夜
ベランダで 澄んだ空気に 煙吹かし 月だけがただ 私を見ている
てぃぐてぃぐさんもブランクがあるとは思えないレベルの高さです。アナ雪を彷彿とさせる「白銀の城」といった語句や、10の月の擬人化表現がさらっと出てくるなど、うっとりとしてしまいました。「瓜」で「破瓜」の単語を思いついたのも素晴らしいです。
短歌はたった31文字で作るドラマの1シーンみたいなものなので、やはり語彙はないよりは豊富にあったほうが、解像度の高い物語を再現できるという好例です。
楽しいことだけでなく、つらいこと悲しいこともこうやって美しい作品に昇華しやすいのが短歌の業でもあり魅力ですよね。
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短歌の企画に乗って、10首詠んでみました - きまやのきまま屋
3.雪
雪は嫌い 閉じ込められるから でも猫が 「にゃ」と誘うから 二人こたつもり
4.あなた
あの時の「春夏秋冬 いつ 死ぬの?」あなたの声が 忘れられない
5.板
こたつ板 ここに座るから毛布ひけ、と言うは毛布よりモフモフけもの
7.外
「まどガラスはどうしてこんなにつめたいの?」鼻先つけた 外知らぬ猫
3,5,7 猫に関する短歌ですね。家族の一員としていっしょに暮らす暖かい目線がほほえましいです。
4の「春夏秋冬 いつ 死ぬの?」のフレーズにどきりとしてしまったんですけど、これは追記にもある通りきまやさんが感銘を受けた詩人さんのことばなんですね。浦歌無子さんという方です。
きまやさんの体験を通して読者もまたこの詩人さんの希求力にやられるというたいへんおもしろい構図になっております。
またブログの特性を活かしてここぞという時に太字を使うのもお手本にしたいです(あまり多用は禁物ですが)。
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2.チョコ
あの人があなたにあげたチョコレート 食べてないけど 味は知ったの
7.外
この星の 外に出たならその外の また外は何 問う子眠らず
10.卒業
瞳から涙の光 男子堕つ 卒業まだリハーサルだよ
にじ子さんもほんとに初心者なんですか?うひー。ひとつひとつの歌、情景の切り取り方、言い回しがとてもお上手だなと思いました。やはりブログをコンスタントに書いている方は短歌のセンスもあるのかな。5の言葉遊びもいいですね。
短歌の表現技法については、先達の方の歌をたくさん読んだり自分でもたくさん詠めば、筋肉みたいに自然とついてきます。
でも「どの情景を詠むか」「どう構図を切り取るか」「エアポケットに気づくか」ってその人のセンスや人生経験によるところも大きいんですよね。
にじ子さんは以前のブクマから底しれない人生経験をお持ちだとお見受けするので、きっとさらに豊かな世界を詠めるのではないかなあと思いました。楽しみにしています。
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管理人のです。割愛。あとで尺取ってたっぷり自分語りしますが、ひとつだけ。
3.雪
粉雪という力士が土俵にあがるまで俺はぜったい月には行かない
「粉雪」っていう四股名の横綱が誕生したら、木村庄之助の声で「こなああああああああゆきいいいいいいいい」ってのが国技館に広がるんだろなと想像して一人で笑ってた
— ノビッタ (@jigen_bakadan) 2015, 2月 5
ちなみに元ネタはこれです。
木村庄之助が「こなあああゆきいいい」って叫ぶ未来が来るまで俺は月にも火星にも移住しない。
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2.チョコ
「どれ食べる?」「チョコがいいな」「グミがいい」みんなウキウキ おやつの時間
4.あなた
ひとしきり食べて遊んでテレビ見て幸せそうなあなたの寝顔
6.瓜
瓜系は メロンもスイカも 冬瓜も 胡瓜もゴーヤも 食べられないの(私が)
りょうさんはご家族を詠んだあたたかい歌ですね。りょうさん=ご家族なんだ、という素直でまっすぐなお人柄が伝わってきます。きちんと定型内におさめて詠めているのも嬉しいです。
私事ですが国語に出てきた「万緑の中や吾子の歯生えそむる」(中村草田男)って短歌が好きでして、あんな感じの爽やかさ、まっすぐな愛ですね。
りょうさんのまっすぐであたたかな目のまま短歌をお詠みになって、将来お子さんに見せるのも素敵ではないかなと思います。
たとえば2の歌ですがたいへん僭越ながら、もうちょいテクニックに走ると、
我はチョコ我にグミをと手をのばす子らよ育てよおやつのじかん
ぼくはチョコわたしはグミねと手をのばす子らを味わうおやつの時間
とも詠むこともできます。ただテクニックに走り過ぎると才能ともいうべき素直な目線が損なわれてしまう可能性もあるので、興味があれば、ゆっくり必要な手法を知っていく、で構いません。
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3.雪
それいけと 雪のお山を登るのは 黄色いながぐつ 紅いほっぺた
5.板
大きな一枚板のカウンターで腹いっぱいに寿司が食べたい
8.夜
膝を折り 夜行バスに身を詰めて あたしのもとに朝(あした)は来るの
ラスト記念すべき20こ目の作品ははなこさんです。
短編小説の作品でも思ったのですが、短歌でもせつなさの表現がお上手ですね。
3は長ぐつの黄色とほっぺたの赤、色の対比が綺麗ですね。それがよく晴れた日の雪の白さに浮かび上がってる情景です。
5は食欲むきだし!って感じのストレートな歌でとても好きです。回る寿司じゃなくて高級そうな一枚板のカウンターで腹いっぱい食べたい、私も。
8、まさしくドラマのワンシーンを切り取ったような歌です。家や田舎から解放されて自分の朝(あした)を掴むために夜を駆け抜けてる感じでしょうか。
全体的にしっかり定型にあてはめようとしてくださっているのが伝わります。1字足りない、1字多いでリズムが惜しい歌がいくつかあるので、そこを意識すればこれからかなり化けるのではないかなと思いました。
tips2:定型を守るための古語や造語はアリ
これも穂村弘が「短歌ください」で言ってたこと丸パクリです。
基本的に、最初のうちは57577の定型を守ることをおすすめします。31文字の制約とリズムを楽しむのも短歌だからです。
で、歌っていくと「文字数多い!」または「足りねえ!」って時が出てくると思います。
そんなときのために語彙はないよりはあったほうがいいし、音にはまるなら(そして視覚的に意味がわかりやすいなら)日常では使わない表現をする、読ませ方をかえる、造語もアリです。(以下引用の太字は管理人。このブログではアフィリエイトはしていません)
受話器置き窓開け放つ午前二時 オリオン星座輝きを増す(大内恵美)
有限者マリヤの肌を緑色(りょくしょく)に塗りつぶしたるはシャガール あはれ(葛原妙子)
それから、古文の文法も知っておくと感情の強調だけでなく音数調整にも使えます。
みちのくの母のいのちを一目見ん一目見んとぞただにいそげる(斎藤茂吉)
31文字という不自由さがある分だけ、単語の並びや表現技法、語彙選択で詠み手各々の自由さが生きてくるんですね。
まーでも難しく考えずに、まずはもじぴったんゲームだと思って、定型短歌を詠んでみてくださいね。
次回はエントリナンバー21−30の方の感想を書きます。
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はてな題詠2月みなさまの感想をご紹介します - はてな題詠「短歌の目」